オクシズこと静岡県の奥地が紅葉の最盛期を迎えて混雑する前に、楽しい道と気になるスポットを巡ってきました。
ルートはこんな感じ
10月に入ってもまだまだ暖かい、と思っていたら、あっというまに涼しくなった下旬の土曜。
5時に出発して東名を西へ進み、薄明を迎えつつつある5〜6時ごろの足柄峠は気温10度を下回って冬装備が必要なコンディションです。
御殿場からは東名に入って、秋晴れのなか富士山を遠目に見つつ進みます。
この朝焼けの富士が見れるのであれば、より富士山の近くを走る新東名に回ってもよかったかもしれない。
富士を近くから見る犠牲にした代わりに、由比ヶ浜の絶景を望みながらの走行。
足柄で冷え込みはしたものの、日が登った海沿いは気温も少しあがり、風も凪いでいて気持ちのいいツーリング日和。
清水ICで東名を降り、静清バイパスを少し走って静岡市中心部へ。
ここで給油して体制を整え、藁科川の左岸を北上してオクシズへ分け入ります。
やや狭隘ながらも、一級品の快走路である国道362号をどんどんと北へ。
観光のメッカである大井川沿いを選ばなかったことも功を奏し、交通量がほとんどありません。
空もまるで合成写真のような気持ちのいい秋晴れの青を呈しており、否応なしにテンションが上がります。
静岡市の日の出は6:00直前と、すっかり日照時間は少なくなりました。
連動して太陽の角度も浅く、7:30を回ってもまだまだ太陽は山影を長く伸ばしたままです。
車検を迎えて走行機会を減らしていることもあって、半月ぶりの走行となるので、季節の変化は過去のシーズンより敏感に感じられます。
例えるなら年に数回しか会わない親戚の子があっという間に成長するかのよう。
国道は藁科川から黒又川沿いに移ります。
北へ向かうにつれ、やや山々の色も秋めいてきた気がしますね。
深い山に入り込んでくると、太陽はもはや地表には注がず、鬱蒼とした雰囲気に。
空や上層の明るさと谷底の暗さのコントラストで、実際よりもなお暗く見えます。
ヘアピンを繰り返して尾根付近まで登ると日照は回復し、ふたたび日の下へ。
いやーしかし、影が長い・・・
川根本町に入ってさらに走ると、一足先に紅葉を迎えた木がお出迎え。
もう一週間・二週間もすれば山全体が染まり始めることでしょう。
未完成である本川根〜静岡バイパスですが、どうやら工事が進展している様子。
去年の春に訪れた時、入り口には古びたバリケードがあるのみでしたが、説明版や工事許可の掲載が増えています。
反対側の共用を待つ馬路トンネル出口も同様で、電照の掲示板が増えて封鎖も動かされていました。
整備事業は、前後のトンネルや接続道路が2024年の2月、橋台整備が3月までの表示だったので、今年度内に土木工はそこそこ進みそう。
2024年度中には大きな進展がありそうですね。
バイパス区間を抜けて山を降りると、千頭へ到着。
川根大橋を渡って大井川の右岸に渡り、ここからは井川線沿いに県道77号を北上します。
時間は8:00を過ぎていますが、まだまだ谷底は朝と夜の間。
ひんやりした空気の中を淡々と走ります。
奥泉から先で県道388号に移り、いくつかトンネルを越えると、眼前に長島ダムの巨大な人口の斜面が現れます。
市代橋をわたって対岸に移り、右岸にあるおおたる広場の駐車場にバイクを停めます。
時間はここで8:30。
写真左、木々の上から顔を出すのが長島ダムの天端。
眼下に大きく広がるのは現勢工とダム下流広場です。
今日はここからちょっとハイキングといきましょう。
ダム下流側の頭上には大きな橋が2つ見えていますが、緑に塗られた鋼製の橋桁は今走ってきた県道388号。
一方で灰色のコンクリートの橋桁は井川線の橋桁です。
ここは2021年の12月に乗車していますが、上からはこんなふうに見えます。
ダムの建設に伴って付け替えとして建設された区間ですが、下流側にはダム建設前の旧線区間が残っており、遊歩道として開放されているので、これを歩きにいくのが目的です。
ダム直下の減勢工をよこぎるしぶき橋。
単径間PC吊床版橋という形式で、吊橋なのにコンクリートで、主塔もなければ露出ケーブルもないというおもしろい橋です。
放流量は控えめながら、気持ちよく舞い上がる飛沫が気持ちのいい橋の上を渡ります。
ちょうど天端から太陽も顔を出し、寒さは感じません。
橋の左岸側は封鎖されていました。
周り道するには面倒な立地ですが・・・
幸いにも通行は可能で、手でかんぬきを開けて通行します。
鹿除けのための措置のようですね。
左岸に到達したら、川沿いの道から脇道に逸れて河原へ。
キャンプ場の方へ歩いて行くと、いよいよ旧線跡です。
河原の見える位置にぽっかりと口を開けるこのトンネルが旧線跡。
抜けるとキャンプ場にたどり着きます。
コンクリートで覆工された小さなトンネルは、照明もなく真っ暗です。
歩くにはライトが必須ですね。
長島ダムのふれあい館で貸し出ししているようですが、9:30〜16:30の開館なので注意です。
反対側から来る場合はアプトいちしろ駅でも借りられるようですが、こちらの始発は10:00ごろです。
トンネルはただの廃線跡というわけではなく、ミステリートンネルという観光スポットになっています。
観光客向けに、センサーで動作する不気味なオブジェがいくつか配置されています。
私はどちらかというと、無骨で静かな廃線を楽しみたいので、見てみぬふりをしながら進みます。
短いトンネルを抜けるとキャンプ場の敷地に出ます。
アプトいちしろキャンプ場はオートキャンプ場で、河原の旧線敷を利用して作られています。
設備も綺麗でシャワーもあり、電源も借りられるのでライトなキャンプによさそうです。
キャンプ場の炊事場を抜けて進みます。
奥でぽっかり口を開けているのが、2本目のトンネル。
遊歩道になっているトンネルは3本ありますが、一番上流側のものは対岸である左岸のダム堤体の真下、ここが最も下流側です。
同じく照明のないトンネル。
内部でカーブしているため出口のあかりも一才見えません。
フラッシュも炊かず、ナイトモードで撮影するとこんな感じ。
内部は奥に行くと覆工が裾部のみだったり、完全素掘りの部分もあります。
天井からは地下水が染み出し、雫の落ちる音がして、幻想的な風景が広がります・・・と言いたいところですが、肉眼では何も見えませんw
雰囲気を台無しにする仕掛けオモチャはここにもあるので、人のいないタイミングでないと真っ暗なトンネルは体感できないかも。
400m弱のトンネルを抜けると、現役のアプトいちしろ駅のある広場に到着です。
立っている場所が旧駅跡で、写真左側の川に近いほうに新駅が移設されています。
駅には自販機やトイレもあるのですが、始発の1時間前ということで開いておらず。
何度か紹介していますが、このアプトいちしろ駅から長島ダム駅までの1駅間のみダムによる付け替えで超急勾配となっており、追加の機関車が必要。
そのためこの1駅間だけ電気運転(他はディーゼル機関車)、かつ車輪だけではなく、歯車を噛ませて進むアプト式での運行となっています。
比較的土地の広いアプトいちしろ駅には機関車の車庫も建設されています。
歯車つきの機関車が通過できるよう、踏切の踏み板が窪んでいるのが面白いですね。
ちなみにこの駅までは車道が通じているので、バイクで乗り付けることも可能です。
帰りは車道から戻ることにします。
機関車の脇を通って上流方向へ歩きます。
側面に描かれた歯車の意匠がかわいいですね。
町道なので地図には細道で描かれていますが、道はこんな感じで、オクシズとしてはマトモな道です。
落石はちょこちょこあるので注意が必要ですね。
気持ちよく伸びるアプト式の路盤を眺めながらてくてくと歩いていきます。
昭和末期〜平成初期の土木パワーはすごいですね。
キャンプ場までは、トンネル経由で7〜8分、山道経由で15分といったところです。
キャンプ場の上の道から県道に戻り、ダムの天端へ歩みを進めます。
左にしぶき橋、中央やや右に停めたバイクが見えます。
ダムの奥にチラ見えしている赤い屋根が長島ダム駅ですね。
天端から眺める上流側、ダム湖の名前は接岨湖。
歩いているうちに時間は9:30に近づき、太陽もずいぶん高く登ってきました。
見た目上そんなに奥行きがないように見えますが、複雑に折れ曲がった川筋に沿って伸びる大きな湖です。
突き出した展望スペースから下流側も。
特異な構造のしぶき橋がよく見えます。
放水が着水しているところのすぐ右、ちいさい三角型のでっぱりの影が展望スペースの影です。
床がグレーチングになっていて怖いw
ダム脇の監査廊も公開されていて、堤体に沿って歩くこともできます。
日常的にここが公開されているのは珍しいですよね。
ちょうど駐車場へのショートカットにもなるので、ここから降りましょう。
獣の糞が散らばる無骨なコンクリート階段をしずしずと降りていきます。
間近で、というか、ダムそのものの構造物に接しながら見上げる堤体はスケール感が半端ない。
ちなみに堤高は109mなので、ビル36階分程度ですね。
最上流側のトンネルにも寄ろうと思っていましたがすっかり忘れてしまっていました。
1人でスタスタ歩いてぐるっと1時間15分ほどのハイキングを終えて、時間は9:45。
次の目的地へ向かうべく、さらに上流へ。
紅葉写真のスポットである奥大井湖上駅も、紅葉前・始発前ということでビュースポットに誰もいません。
これがシーズンになると、すれ違い困難な県道でスタックが発生するくらいの混雑になります。
紅葉はまだですが、沿道にはコスモスが綺麗に花開いており、ささやかに目を楽しませてくれます。
すいすいと上流に向かって走り、井川湖にかかる井川大橋へ・・・と思っていたのですが、残念ながら通行止め看板。
2017年に来たきり渡っていなかったので、久々にと思っていたのですが、思惑が外れました。
橋の様子を見ると、なるほど補修工事の真っ最中。
11月末までの工事予定だそうなので、12月に入れば通行できるかも。
その時期はもう下手すれば凍結していますから、来シーズンですかね。
ということで、諦めて次の目的地へ。
来た道をやや戻り、井川の市街地を抜けたところで大井川を離れて井川駅方面へ。
くねくねと楽しい山道をひた走り、県道60号から県道27号へ。
途中、がっつりと伐採された斜面で眺望が開けました。
谷底には中河内川が流れていますが、まったく見えない谷の深さ。
国内は林業が下火になって久しく、展望台すら樹木が伸びてきて見通しが悪い昨今ですが、伐採が盛んな頃はこういう開けた景色も多かったのかなあと思うと、想像が広がりますね。
その場合は対岸も禿山が多かったりするんでしょうけどw
しばらく走り、看板に従って鋭角な脇道へ進路を向けます。
常設の片側交互通行という珍しい設備の先にあるのは、口坂本温泉。
民宿が数軒と、公営浴場があるだけのこぢんまりとした温泉地です。
その公営の口坂本温泉浴場はご覧の通り、こぎれいに維持された施設。
基本的には毎週水曜定休で、9:30〜16:30の営業です。
到着は11:00過ぎ。
この手の施設は市外からのアクセスだと割高料金で500〜800円くらいするものですが、ここは静岡市民でなくても300円。
リーズナブルすぎて逆に申し訳なさすらあります。
質素ながら清潔な施設内は、浴室の他に休憩室。
浴室は内湯が6人、露天が4人くらい足を伸ばして浸かれる規模です。
ゆったり1時間弱入浴し、さすがに300円の出費では申し訳ないのでサイダーとアイスを購入。
アルコール含む飲み物とアイス、カップ麺などが販売されています。
ハイキングの汗を温泉で流したら、あとは帰るだけ。
県道27号をひたはしり、中河内川から安倍川に合流して下流へ。
静岡らしく広がる茶畑を抜けて快調に走ります。
青々として見えるので、秋番茶でしょうか。
ちょうど川の合流地点、玉川自然広場には車が集まっていました。
川遊び、にはさすがに寒いでしょうが、気温も20度近くになり河原でのキャンプは捗りそう。
そんなこんなで終日秋晴れ、満足のツーリングでした。
そういえば昼食を食べてないなーと思い出しましたが、東名が混雑して後味が悪くなる前に、早々に撤退!
この日の走行距離は533.7km
ODOは110554kmになりました。
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