文化の日を含む3連休最終日。
そろそろ積雪の季節も近づきつつある中、今シーズン最後となりそうな東北方面へ足を向けてきました。
タイトルの通り、この日のツーリングの趣旨は国道399号の走破です。
国道399号は、いわき市の夏井川河口付近に端を発し、山形県は米沢の北、南陽市に至る国道です。
今回は終点から始点に向けて南下する形で走行することとし、3:00発で南陽に向かいます。
東北道を福島JCTまで走り、そこから東北中央道に入り、栗子峠を越えます。
6:30ごろに走る栗子峠は、背中を見るとちょうど日の出が稜線から差し込んでくる幻想的な雰囲気。
人里離れた、という言葉を裏付けるかのように、一つ南の板谷峠を越える奥羽本線は、赤岩駅の廃止に続いて、大沢駅のほぼ廃止準備ともとれる全列車通過が発表されるような現況です。
大沢駅へは2021年に訪れてレポートしているので、記録の一つになりそうですね。
暖かい秋は米沢でも同じで、この日は15℃くらいまで上がる予報。
とはいえ、さすがに明け方の山間部は季節なりに冷え込んで気温1℃。
・・・ところが、長い長い栗子トンネルは、洞内が地熱で暖かく、気温は29℃まで上がります。
28℃の気温差に加えて、トンネルを抜けた先にはこれまで晴れていたのが嘘のように濃霧。
気温の低下と同時に気化熱も奪われて寒すぎる・・・!!!!
濃霧の中、米沢北ICで下道に降り立ち、給油して南陽へ。
下道でも霧が濃くなり薄くなり、ヘルメットのシールドを拭いながらの走行。
寒くて視界も悪いと、シンプルにつらい。
南陽市の中心部を外れ、西側へ。
田んぼの広がる郊外は、寒さ・視界の悪さにくらべて退屈さも襲ってきてヤケクソ気味w
そんな中、最初の目的地として目印にした場所、梨郷駅にようやっと到着です。
濃霧で時間感覚がなくなっていますが、時間は早くも7:30を回っています。
梨郷駅は旧国鉄長井線を第三セクターが引き継いだ、山形鉄道フワラー長井線の駅です。
列車は1時間に一本を下回る水準ですが、駅構内は綺麗に維持管理されています。
駅前を少し眺めたあとは、早速国道399号の終点へ。
この信号もない交差点こそが、国道399号の交差点。
2024年の3月に梨郷道路が開通して立体交差化された結果今の形になったので、正確には信号が「なくなった」という表現が正しいですね。
交差点を東へ入り、南陽市の中心、赤湯の北から東に回り込み、国道は進みます。
このあたりは市街中心を避けるように国道が付け替えられたんだろうな、と推察させるクランク具合。
右へ左へと曲がりながら赤湯の南東方向に至り、南陽高畠ICの脇で国道113号と合流します。
しばし重複区間となったあとは、単独で分岐して旧高畠駅の脇を抜け、鳩峰峠へ挑みます。
国道399号の大きな峠はこの鳩待峠が唯一で、北進方向では最後の難関と言う言葉が相応しいですね。
事前のリサーチ不足で旧高畠駅跡に寄れなかったのが悔やまれる。
鳩峰峠は2020年以来の探訪。
以前の写真とほぼ同じ位置で一枚。
霧が深すぎて稜線は全く見えませんね。
霧は米沢の盆地にだけ立ち込めていたようで、峠へのアプローチを開始した途端に視界がクリアになりました。
幻想から抜け出したような晴れやかな気持ちで、先へすすみます。
しばらくみない間に太陽はすっかりのぼっており、杉林から美しい木漏れ日を与えてくれます。
時間はここで8:15、これは山の上の景色も期待できそうです。
すっかり秋模様な低い太陽と青く済んだ空の中、込み入った山道を地道にのぼっていきます。
紅葉も進んでおり、先ほどまでの真っ白な景色とは裏腹、まぶしすぎるコントラストが目に刺さります。
キラキラと美しく影を落とす太陽と、程よい風でそよぐ木々。
なんだここは天国か・・・!
見惚れて足を掬われないようにしなければ。
こんな林道然とした道でもしっかり国道。
看板を見て、今日の目的が鳩待峠登りではなく、国道399号の探訪だということを思い出します。
峠の頂付近で、見通しのいい場所に立ち止まって西の景色を眺め、しばし絶句。
いやソロツーなのでずっと黙ってはいるのですが、思考さえ止まる景色。
美しくカーブする道路、黄金色に染まった稜線、その先の見事な雲海。
地平の霧とは裏腹に、空は遠く高くまで美しく澄み渡っており、見事な秋の眺望。
これを適切に表現する語彙が見当たりません。
下界で寒く退屈な思いをしたのは、この景色のための前菜だったと思えばむしろ僥倖。
峠の頂上は風もなくおだやかで、何組かの先客が同じように景色を眺めていました。
どの車両もすべて西向きで、景色を満喫しているかのよう。
しばし標高1591mの眺望を楽しみ、峠を東へ向かって降ります。
東側の景色はすでに朝日に照らされ、全面が日向。
紅葉の彩度も自然と高く感じられます。
青い空に輝く紅葉の木々を見たかと思えば、やや下がって木々の背が高くなってくるにつれ、色づきはじめの黄緑色が空を覆います。
こういう景色の変化を広い視界で楽しめるのはバイクだからこそで、シールドを開けて満喫します。
このような景色の中を抜けるのがいかに美しい景色なのかを記録し伝えるために、最新のスマホを買っていると言っても過言ではありません。
ブロックノイズなし4Kの元画質でお伝えできないことが惜しいw
鳩峰峠は山形から一瞬福島県へ入り、宮城県を経由し、また福島県へ戻ります。
東側の斜面は部分的にうっすら朝靄がでており、その視界の曇り具合が朝の夢のような雰囲気。
山形側と比べて眺望のある場所は少ないですが、それでもこういった景色がちらほらと見え、興奮しきりの走行です。
標高を下げてきて、福島県へ入ります。
ここで時間は9:00
しばし下ると、眼前が開けて道の規格が一気にあがります。
ここからは摺上川ダムの構成する茂庭っ湖の湖畔で、ダムの付け替え道路です。
ダムの竣工は2005年と、比較的新しいダムです。
険しく狭い峠道から、広い湖畔を眺めながら走る快適な広い道路へ。
洪水調整機能もあるので、水位はやや低めの様子です。
ロックフィルダムなので、自然に調和した堤体が美しいですね。
太陽も高く登り始め、水面の揺らぎがキラキラと反射しています。
本当に今日は冒頭から景色がよすぎる・・・
景色の暴力を遠方に受けながら、ダム下流を南へ降ります。
空の色がコロコロ変わって見えるのは、ビビッドすぎる紅葉のせいでカメラがホワイトバランスを見失うから。
山を下りて平地に辿り着くと、紅葉も落ち着いて夏の終わりといった風景に。
これでも11月の東北なんですけどね。
ここで時間は9:30を回りました。
鳩待峠を降りた先にあるのは、飯坂温泉。
ここは2022年に湯回りに来ましたね。
国道は温泉街の中心をかすめて進み、伊達市方面へ向かいます。
東北道の下をくぐり、東北本線を乗り越えつつ東北新幹線をくぐります。
田んぼの中を抜ける新幹線の高層高架は見事そのもの。
惜しむらくアンダーパスのタイミングで新幹線が通過しなかったことか。
伊達の先で国道4号との交差点を抜け、保原方面へ引き続き東進。
阿武隈川を渡る伊達橋は、架け替えの真っ最中で仮橋通行。
2022年3月16日の地震で橋台から桁がずれ、既存の橋脚を利用した復旧が予定されています。
対岸の旧保原町地域で国道349号と重複。
このあたりで一旦399号の文字は姿を消し、霊山を超えて月舘あたりまで長く重複します。
目立った市街地はここが最後となり、残りは阿武隈高原の高地を抜けていく里道になります。
市街地を離れて快調に走り、霊山へ。
こういう山間のゆるやかなカーブこそが399の本領であり、区間の2/3を占めます。
東日本大震災の復興支援道路である、福島相馬道路をパスし、少し走れば国道349号との重複はおしまい。
単独区間に入った途端に道は狭くなりますが、そこはさすが国道だけあって、舗装状況は良いままです。
ゆったりと切り返し、ゆるやかな峠をいくつも越え、自治体を繋いでいきます。
標高は500mほどなので、紅葉はまだまだですね。
空は変わらず快晴で風も弱く、快適な里道走行が続きます。
直進性の弱い国道399号は、たびたびクランク上に県道や他の国道に遮られつつ進みます。
淡々としているものの、経由する地域ごとに小休止が挟まって、テンポの良い走行ができますね。
目隠しされっぱなしの看板を右折して、飯樋を経由してさらに南へ。
淡々と時間と距離を伸ばし続けますが、不思議と退屈感はなく。
気温も厳冬期装備ではぽかぽかと暖かいので、まさに秋の快適ツーリングといった様相。
久しぶりのヘアピンカーブをいくつか登り、その先には見晴らしのいい展望台が。
あぶくまロマンチック街道と石碑の立つここは、長泥の桜展望台。
しかし桜の写真がネット上にほとんどありません。
なぜかというと、この北側の尾根から降った先の長泥、その先津島の国道114号との交点までは、比較的最近まで通行できなかったからです。
長泥地区の一部避難指示解除は、2023年の5月、それでも特定復興再生拠点区域という扱いで、解除後すぐには戻ってきた住人の方はいませんでした。
つまり、震災・原子力災害の2011年3月から12年間以上、この桜は一般の通行を拒んでいたんですね。
長泥地区内は、つい半年前まで交通封鎖がなされていたとは思えない、のどかな雰囲気。
除染で表土の剥ぎ取りもやったと思われるので、それが逆に景観をよくしているのかも。
いちづく坂峠を越え、浪江町に入ります。
交通量が少ないことを疑わせる落ち葉の積もり方ですが、側溝の掃除などはいきとどいて、整備が行われているのは見てとれます。
浪江町内内陸部は、通行は許可されているものの、未だ基本的に帰宅困難区域の指定が続いていて、沿道の脇道は全て封鎖されています。
震災から13年、当時の小学1年生はすでに成人を迎える歳ですが、まだ復興は続きます。
そんな空気とは裏腹に、美しく交通量の少ない里道は快適なツーリングシーンを演出。
通行する分には安全かつ快適なので、どんどん走りに来たいところ。
平地まで降りてきて、国道114号との交点。
ここでまたクランクして、国道459号とも絡みつつ、ひきつづき南進します。
ちょうど国道114・国道399・国道459と3国道の結節点ながら、長らくここが通行止めだったので不便だったんですよね。
南進しはじめてまもなく、また小さい峠、登館峠を越えて葛尾村に入ります。
この峠は2014年4月に訪れた際に通行を阻まれており、実に10年ぶりの通行。
当時の写真のバリケードの内側から撮影しているアングルになります。
いやはや、感慨深い。
葛尾村に入ってからは、改良区間が増えて走行の快適さが増します。
まだ抜けられるという情報を持っている人が少ないからか、そもそも人口が少ない地域だからか、快走が続きます。
時間はここで11:00を回りました。
本当に許されていいのか、というくらいのマイペース走行を続け、葛尾村の中心部に到達。
ここでまた微妙にクランクをして南進を続けます。
福島名物ともいえる、道なり55kmも離れた福島空港がすぐそこにあるかのような、とんでもない優良誤認距離非表示看板をみつつ進みます。
限度というものがあるだろうw
高原らしくいい風が吹くのか、風力発電施設の組み立て現場を沿道に発見。
奥に写っている作業員の方との対比を見ると、そのブレードやベアリングの巨大さがわかります。
葛尾村を抜けて田村市へ。
このあたりで残りも1/3というところでしょうか。
県道288と出会ってこれと重複し、進路は一度東へ。
その後また別れ、ここではじめて国道の始点であり本日の終点、いわきへの看板が見えます。
逆にいうと、いわきに行きたければここまでは別の道が早いということですね。
288号と別れてすぐ、またクランキングして国道は南へ。
本当にこの道は立場が弱い。
いわきが近づくにつれ人口もどんどん増え、人里の密度もあがっていきます。
川内村を抜けて、なおも南進。
先ほどの風力発電施設の組み立て現場だけでなく、川内村からは周囲に風車がたくさん見えます。
カラッと晴れた空にゆったり回る風車は、それはそれは明媚なもので。
ここからいわきまでは平坦に・・・というわけにはいかず、あの風車の立ち並ぶ山を越えます。
ただし、この山区間はバイパスが整備済みで、基本的には快適なトンネルでスイスイと抜けられます。
2009年開通の手古岡トンネルを抜け・・・
お次は戸渡トンネル。
こちらは震災後、2017年の開通。
しかしまあ、トンネルばかりではつまらん、ということで、旧道が通行可能な状態で残る十文字トンネルはスルーして旧道へ迂回します。
十文字トンネルは2021年の竣工、開通は2022年。
旧道はそれなりに狭くツイスティながらも、快適走行可能な道。
里道ばかりだった中間区間の仕上げということで、最後にパリッと綺麗に走ります。
12:30でも斜めから差す太陽に秋を感じながらも、針葉樹だらけで紅葉しない林の中を抜けて峠は終了。
山を抜けると一気に嘘のような眺望が目に入り、眼下はいわきの街並みに続く平野です。
夏井川を眼前にしてこれを渡らず、左岸側を並行して進みます。
常磐道をアンダーパスし、高原区間は完全に終焉を迎え、ここからは平野。
渡り損ねた夏井川を磐城橋で渡って右岸へ渡れば、もういわきの中心部です。
道はいわき駅の西側から回り込んでくねくねと方向を変えたあと・・・
南の駅前通りで駅に背を向けていきます。
平大橋でまた左岸へ戻り、国道6号にシームレスに接続。
この交差点で399号は終わりです。
終点の交差点にガソリンスタンドがあったので、せっかくだからとここで給油。
時間は13:00を少し過ぎた頃合いで、実に7.5時間の走行でした。
これにて目的は終了!なので、飯を食って帰路につきます。
399の延長のような6号で少し走り・・・
やってきたのは道の駅 よつくら港。
浜風香るシーサイド夢長屋とかいう覚えにくいうえにピンとこない副題がついています。
「大阪ドーム前千代崎」のほうがまだピンと来る。
副題はさておき、さすが港を標榜する道の駅。
フードコートの海鮮丼は2300円の価値ありで、ちゃんと地物である「常磐もの」も押さえてあります。
今回南進ルートにしたのは、日の出時間の関係もありますが、お昼にこれが食べたかったから。
逆に北進だと米沢牛だったかも。
ということで、海の見えるカウンターで美味しいお寿司をいただき、本日の目的は完遂です。
帰りはそのまま常磐道に入ってまっすぐ自宅へ。
16:30ごろの早い早い夕焼けを眺めてあらためて秋を実感しつつ、ツーリングはおしまいです。
この日の走行距離は、メーター上は高速多めながらもしっかりした道を走って762.2kmでした。
ODOは123,561kmになりました。
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